43億円がブロックチェーン上で永久的にアクセス不可能に、Akutar NFTを襲った悲劇とは

 多くの投資家とファンから長い間期待されていたNFTプロジェクト「AkuDreams」が22日に発足したが、思いもよらぬスタートとなった。ブロックチェーン上で条件が満たされると自動で仮想通貨の処理が行われるスマートコントラクトにおけるコードの欠陥に気づくことが出来なかったプロジェクトチームが多数のエクスプロイトによって約3400万ドル(約43億円)のイーサリアムが永久的にアクセス不可能になった。「エクスプロイト」とはソフトウェアの欠陥を突いて悪意のある不正な動作を行うプログラムのことである。

 悪夢を見たAku NFT

 Akuのプロジェクトチームは一連の事件、過ちの全ての責任を負うことを表明し、被害を被った方に向けた返金の計画をTwitterを通して発表した。また、膨大な損失を目の前にしたプロジェクトチームは謝罪と共に、ジョンソン氏は「一年前の何もなかった状態と同様、一からコミュニティーの信頼と価値を作り上げていくだけだ」と前向きな姿勢を見せている。

 

 Akutar NFTを立ち上げたのはアメリカの元MLB選手のミカ・ジョンソン氏であり、引退後に興味を抱いていたアートの世界に足を踏み入れ、巧みなストーリー構成能力と共に宇宙飛行士の「Aku」をコレクションとして展開し、NFTで成功をおさめている。

 また、本プロジェクトではAkuの保有者は新サービス「Akuverse」を使うことができ、ユーティリティとして将来的なプロジェクトやコラボレーションに優先的なアクセスを得ることができる。

 膨大な損失の原因は何だったのか?

 仮想通貨に関連する技術は約10年の間に瞬く間に普及したものの、実際のコーディングといったテクニカルな部分の知識を持ち合わせる人は極めて少ないことが指摘できる。そして、今回のAkutarの件では複雑なコードについて詳細に理解できる人がプロジェクト内にいなかったことが原因の一つだといえる。また、第三者機関に依頼をして複雑なコードの監査を行えば防ぐことができた損失であっただろう。

 しかし、驚くべきことは膨大な損失をAkuコミュニティー全体が被っても、大半が前を向き、ポジティブなコメントを残していることであり、Twitterでもコミュニティーの結束の強さが伺える。これは株式市場においては考えられないことであり、仮に株式市場において投資家たちが損失を被れば、直ちに大規模な訴訟が繰り広げられることが予測できる。

 

 今回の出来事で人々が恐怖を抱き、さらなる発展の可能性を持つNFT市場に歯止めがかからないことを願うと共に、ここまで強固なコミュニティーをゼロベースで作り上げたミカ・ジョンソン氏の「カムバック」には注目すべきものがある。